うららかな春の午後に
微睡む木漏れ日の下で
兎の夢でも見たみたいに
不思議な感じがしたわ
小鳥の呼び声を辿り
茨の小立を抜けて
進む先は 見たこともない
隠された塔の前
旅行記は読まないけれど
こんな時 流浪の旅人なら
「冒険が私を待っている!」
…なんて思うのかしら?
嗚呼…姫君よ! 其処へ入ってはいけないよ
そんなことを言っても彼女には届かない…
「おじゃましまーす!」
暗い 暗い 古びた塔の
窓から見える樹氷の城
高い 高い 階段を上れば
ひとつ 扉が 開いていた…
嗚呼…姫君よ! 其処へ入っていけないよ
部屋に置かれた 糸紡ぎの針の意味も知らずに
姫様の行く 糸紡ぎ機を操っている
一人の老婆の 窪んだ目が怪しく光っていた…
そして彼女は尋ねる
誰もが恐れていた
糸紡ぎの針に指を刺して…
「はぁっ…はぁっ…姫様…っ」
走る 走る 樹氷の森を
月もない夜闇の中
走る 走る 不思議の森を
供もない忠誠心の強い侍女は
そう ある小屋の扉を強く叩いて助けを求めた
微笑む賢女は茨の城へと魔法をかけ 謳った…
*