Gladsheim



一人の少年がそして空飛ぶ船を動かした

旅のお供は一羽の白い鳥 見たこともない天上の都へと


グラズヘイム





昔 母さんが 話してくれた
ひとりの少女が紡ぐ 夢物語

亡くした彼に 逢いたいがために
バベルの塔よりも高く 羽ばたいていった

だけど、彼女の世界は
神の怒りに触れて
はかなくも 崩れてしまった

その「グラズヘイム」には 街のどこかに
すべての知恵を集めた図書が眠っているという

僕は思った
きっと それは彼女が
いとしい人だけに宛てた手紙なんだろう

心無い多くの人が
大切な本に触れぬように
僕は一足先に空に旅立った

空を舞う白い鳥が 僕を導くだろう
遥か先 あるという 楽園を目指して
ぴんと張ったマストが風を受けて
彼女もこんな気持ちだっただろうか
彼方へ

雲の切れ間に浮かぶ小島は
緑豊かに ただ そこにあった

かつて 神の世界のほど近く
希望を胸に抱えただろう 人々はなく
草木には罪はないというように
うつくしいだけの風景が取り残されていた

ここで 彼女は 悟ったんだろう
目映いだけの光は まだ 耐えられないと
かの人の腹に宿った息吹が
しわくちゃになる その日まで 彼女を愛すこと

僕は、無人の都市に一歩足を踏み入れた時、
白い靄の中 誰かに 抱きしめられたような気がした

空を舞う 白い鳥が どこからか降りてきて
僕の家と瓜二つな 赤い屋根の小屋へ

導かれて 僕は気付く
きっと彼らはまだ
僕の知らぬ物語を 紡いでいるんだろう
「ただいま」を言う準備はもうできているよ
そうさ、
ここは喜びを奏でるための世界

「グラズヘイム」







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