声には魔力があるのだと言う

ともすれば 彼はそう 彼女に仕える魔法使い







私の可愛いプリンセス
どうかその笑顔が 愛らしいそのままで
ずっと ずっと あるようにと

私の優しいせんせいは
トラムブランカのお母様
本当のママみたいに
厳しくもあたたかなひと

目の見えない私を
泣きながらそっと抱きしめて
「おかえりなさい」って何度でも
つぶやいてくれた

私の優しいマトカ
どうかこの時間が
終わらないものでありますように
ずっと ずっと 願い続ける

君はまだ知らない
この世界のすべてが
僕の演じるものであることを

僕の可愛いプリンセス
どうかこの僕の罪に
いずれ気づいてくれますように
心の内 願い続ける

私の可愛いプリンセス
どうかその笑顔が 愛らしいそのままで
ずっと ずっと あるようにと

-厳格な乳母-




ねぇ 今日はどんな話を聞きたいの?
この世の夢のような物語りをしましょう

未来を詠む巫女とかみさまの話?
それとも迷子の女の子の恋物語?

じゃあね、この花畑のむこうがわの
美しい世界の話を聞かせてよ

きっとそう 鳥たちは この狭い世界の
広い広い遠い空まで羽ばたいていくんでしょう?
ねぇ、私でも 檻のむこうで
自由に飛び立つ そんな日が来るのか教えてよ

それじゃあ今日はこんな話をしましょう
ある瞳(ひかり)の見えない姫君の
さあ 一緒に歌おう?
地図を広げて
行き先は君が思うがまま

ある日 花畑に佇む姫君が
いつかやってくる王子様の 訪れを待っている
「さあ 僕のポルカ」
手を差し伸べる
そんな人はあなたのすぐうしろにいる

きっとそう 大丈夫 二人共にあれば
いつか笑える未来がやってくるはずだから
もう、大丈夫 怖がらないでいいよ
檻の鍵はもうとうの昔に外れているから

-物語る令嬢-




見えない 月夜の晩に あなたが窓を叩く
三回のノックが ささやかな逢瀬の合図

麗し 恋のお相手は 誰にも言えぬ秘密のひと
気まぐれなあなたは今日も微笑んで
私の手の甲にそっとキスを落とした

やあ、こんばんは愛しの君
今宵も時計の針が
その頂点を指すまで
ふたり 愛を交わそう

流れ星が私の願いをかなえてくれるなら
そのときは あなたとの永久を望んでもいいですか?
そんなことを言ったらあなたは「ばかだね、きみは」って
私の吐息ごと奪って 脚を絡めた

今だけ、そう…今だけでいい
あなたの愛で私を包んで

流れ星が僕の願いをかなえてくれるなら
このウツロな世界を救って君に光を与えるべきだ
けど、愚かな僕はこんなに君が欲しいから
恋人の皮を被って 今日も君を愛す

-気まぐれな恋人-






 

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