約束の秋はとうに過ぎた。

そこは神に見捨てられた土地。
戦の手が伸び、その小さな村はなすすべもなく滅びてしまった。
それでもなお、ひとりの女が村の入り江に佇んでいる。
かつて、嘆きのままに死んでいったという娘の逸話を残すその水辺と交じり合い、
次第に女の姿は霞んで消えていく。

ただ、唯一の夫の帰りを待ちながら。



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